(社)全日本ネオン協会では21世紀を迎え改革事業の一端としてネオン管の黒化現象解明に取り組んでいます。
まず、その第一段階として平成12年10月にアンケート調査が行われ、その結果については本誌Vol.62(平成12年12月1日発行)の特別記事として掲載しました。
その後第2段階として、実証試験を東京都立産業技術研究所の大型環境試験装置で平成13年2月より6月にわたり実施しました。その結果は「ネオン管黒化現象原因調査中間報告書」(平成13年8月発行)として(社)全日本ネオン協会全会員に配布されました。
そしてこの大型環境試験装置で試験されたネオン管を北海道石狩市において実際に屋外に設置し、平成13年12月より経年試験(1サイクル:6時間点灯 2時間消灯で1日3サイクル)を実施しましたが目立った黒化現象は起きませんでした。このため平成15年1月より3サイクルを1サイクル(6時間点灯 16:00より22:00まで点灯)に変更し、引き続き経年試験を継続しています。
これと平行して第3段階として、(社)全日本ネオン協会技術委員会で今年度のテーマとして決定された「黒化現象の原因究明」についてWG(ワーキンググループ)を発足して新たな試験方法を検討しました。今回は正常管と不良管を製作して平成15年1月から3月にかけ再度東京都立産業技術研究所の大型環境試験装置で試験を実施しました。
今回の試験は中間報告の結果を踏まえ、混合ガスを使用し、ネオン変圧器に接続するネオン管の点灯メータ数に余裕を持った設定とし、ネオン管の製作条件のみを種々変化させて黒化現象の原因を調査しました。
1.ネオン管の製作条件(詳細は表1.ネオン管のサンプルの明細を参照)
@ |
原管(塗装管)の湿気及び焼成の甘い管 |
A |
蛍光塗料による違い(FD、高輝度管、透明管) |
B |
排気工程で電極の焼き具合が不足している管 |
C |
排気工程でネオン管の焼き具合が不足している管 |
D |
排気工程で真空度が不足している管 |
E |
封入水銀の量が多い管、少ない管 |
F |
水銀拡散処理の未処理管 |
G |
エージング不良の管 |
H |
製作工程の全てが正常な管 |
2.試験方法
巻線型ネオン変圧器(12KV)及びインバータ式ネオン変圧器(9KV相当)にそれぞれ4本接続し、東京都立産業技術研究所の大型環境試験装置内に設置して2時間点灯、1時間消灯の連続点灯試験を行いました。平成15年1月下旬から3月上旬にかけ、第1回目−10℃で15日間、第2回目−20℃で15日間実施しました。
3.考察
@ |
水銀拡散処理をしなかったサンプル管上部に黒化の兆候が見られました。 |
A |
封入水銀の量が少ないサンプル管をインバータ式ネオン変圧器に接続した場合、上部に黒化の兆候が見られました。 |
B |
電極の焼き具合が不足しているサンプル管をインバータ式ネオン変圧器に接続した場合、上部に黒化の兆候が見られました。またシミも発生しました。 |
C |
原管の焼成乾燥状態が悪いサンプル管にシミが発生しました。 |
D |
ネオン管の焼きが不十分なサンプル管にシミが発生しました。 |
E |
巻線型ネオン変圧器で点灯したサンプル管の方が、インバータ式ネオン変圧器で点灯したものより明るく感じました。ただ前者については若干チラツキがみられました。 |
F |
高輝度塗料を使用したサンプル管は、低温時他のサンプル管より極めて明るいことが判明しました。 |
G |
時間の経過と共に、封入された水銀が下方に溜まっていくことが観察されました。 |
4.結論
@ |
ネオン変圧器に接続するネオン管のメータ数を適正にする条件下においてはネオン管の製作工程を適正に行えばネオン管の黒化現象は防止できると言えます。 |
・ |
ボンバーダ工程時電極の焼きを十分に行う |
・ |
封入する水銀量を適正にする |
・ |
水銀の拡散処理を十分に行う。(特に重要である) |
A |
ネオン管を縦に配列した場合、ネオン管の黒化はネオン管の上部に発生することが明らかになりました。これは封入された水銀が下方に移動し、溜まると思われます。 |
B |
ネオン管に発生するシミは、原管の乾燥状態で大きく影響されることが明らかになりましたので、原管の保管方法が大切です。 |
C |
高輝度管の低温時においても従来のものより明るいので、寒い時期にも有効に使用されると良いと思われます。 |
サンプル
No. |
製作工程 |
製作条件 |
製作
本数 |
参考(正常値) |
1 |
原管の焼成工程 |
焼成温度400℃、焼成時間15分 |
8 |
焼成温度、時間: 550℃、30分 |
2 |
原管の乾燥工程 |
水分含んだ人工芝上に3日間放置 |
8 |
乾燥状態: 良好 |
3 |
(製作工程全て正常) |
高輝度蛍光塗料(高輝度管) |
8 |
|
4 |
(製作工程全て正常) |
蛍光塗料なし(透明管) |
8 |
|
5 |
排気工程(1) |
電極の焼き(半分赤くなる程度)
電極附近温度130〜150℃ |
8 |
電極の焼き全体均一に焼く
電極附近温度260〜300℃ |
6 |
排気工程(2) |
ネオン管の焼き、ガラス管中央温度100℃ |
8 |
ガラス管中央温度180〜200℃ |
7 |
排気工程(3) |
排気時間1分、
ガス入れ直前管温度100℃ |
8 |
排気2分30秒、
管温度40〜50℃ |
9 |
排気工程(4) |
ガス入れ直前管温度 20℃(11分間放置) |
8 |
管温度40〜50℃ |
10 |
水銀封入工程 |
0.1g(純度99.9%) |
8 |
0.5g(純度99.9%) |
注) |
No.8 欠番理由:当初の製作条件では、No.7 排気時間約半分とNo.8 ガス入れ直前の温度100℃のサンプル管を製作予定だったが、No.7
製作時偶然にも温度100℃となったので、No.8 のサンプル管を製作しなかった為 |