映画を観るのが好きで、時間をみつけては「シネコン」へと出かけます。大スクリーンの前では、世界の風景、建物、スターの横顔、カメラワーク、セリフ、サウンド等どれ一つとっても臨場感にあふれ、ついついその魅力にひかれてしまいます。
年間約70本の映画を観ますが、家の中ではビデオ、DVDによる映画は観ることはありません。暗い映画館の中が自分には、一番居心地の良い空間の様な気がします。ほどよい緊張感と、ノンストップの映画は家庭では、絶対に再現できないと思います。
数多く観た映画の中で、今でも忘れられない映画があります。5年ほど前に公開されたブルース・ウィリス主演の「アルマゲドン」というSF物を観るため、土曜の夜、「シネコン」へと出かけた時のことです。公開初日とあってチケット売場は大混雑、若い人達でホールはあふれ返っていました。これはマズイと思い、となりの映画を観ることにしたのです。テレビでも放映された「X-ファイル・ザ・ムービー」劇場版です。勿論観たい映画の一本でしたから、迷う事無くチケットを買い求め中に入りました。薄暗い場内には観客は一人もいません。まったく意外でした。あの混雑ぶりにソッポを向いた自分が少し寂しく、映画が始まり、時間が経つにつれて少しずつその寂しさが、恐怖へと変わっていったのです。オカルト的シーンもあり、スクリーン特有の臨場感が恐怖心を増幅させていきました。ストーリーが全く頭の中に入りません。
たった一人で観る映画は、かくも落ち着かないものだという事を初めて知りました。
今でも時々観客が2〜3人で観る映画に遭遇した時には、ついついあの心寒い夜の事を思い出してしまいます。
自分にとって忘れられない一本の映画、それは、ストーリーの全く分からない、また、知りたくもない「X-ファイル・ザ・ムービー」なのです。
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