インタビュー

中野弘伸氏
人の心を豊かにするネオンの研究を
中野弘伸氏
1942年生まれ。職業能力開発総合大学校・電気工学科教授、工学博士。著書に「現場技術者のための PC読本」、「建築設備システムデザイン」「安全管理技術」ほか多数。
 本年度から全ネ協及び関ネ協の顧問、またネオン工事技術者試験委員会委員長として専門的なアドバイスをいただいている中野弘伸教授にお話を伺いました。


  相模原にある職業能力開発総合大学校は厚生労働省の所管の準大学で、防衛大学校や海上保安大学校と同じ大学の一つです。都道府県の職業訓練の指導員養成や職業能力開発に関する調査・研究を目的とする日本で唯一の教育研究機関です。
 中野先生は電気工学科の教授として学生に指導すると同時にネオン協会のみならず電気学会、日本鑑識科学技術学会、電気設備学会等で委員など、さらに国家試験委員や検定委員も担当されています。
―― 随分広い敷地の学校ですね。
 24万平米の敷地にグラウンドやプール、車のテストコースもありますよ。

―― 中野先生はどういう研究をなさっているのですか?
 恩師の朽木雄蔵先生から指導を受け「アルミ導体と銅導体の接続について」の研究で博士論文を発表しました。その当時銅線の高騰にともない、アメリカでは屋内配線にアルミ線を使い出していました。日本も徐々に使用し始めていたのですが、アメリカのサパークラブでアルミ線が原因の火災が発生し165名が死亡する大惨事が起こったんです。私も日本から調査団の一員として派遣されました。その後日本でも大手電設会社ではアルミをかなり使用していたので、私のところにも沢山の調査依頼がきました。矢崎総業(株)と共同研究で研究調査をして火災原因を究明することができました。設備や配線などが原因と思われる火災の訴訟のための原因究明調査を依頼されることも多くなってきました。

―― 電気設備の接続不良やトラッキングによる火災ですね。
 ええ。天井裏などの配線の束は想像以上に熱を持っています。一般の家庭のコンセントの差込部が非接地側と接地側との間でトラッキングが起こっていることも往々にしてあります。このまま放置しておけば火災予備軍として、ある時に瞬間に火災につながる。電気火災が徐々増えていっています。企業に依頼されて調査をし、報告書をまとめ訴訟の勝敗の決め手になることが多いのです。

―― 損害賠償額が大きいので、原因解明は慎重さと正確さが要求される重要なお仕事ですね。電気設備による火災はネオン業界にとっても大きな問題です。気の遠くなるような量の実験や研究を繰り返してこられたのですね。専門の研究、学校の授業、技能五輪の選考会と大変お忙しいですね。

 つい数日前、仙台であった第45回技能五輪全国大会「銀河系いわて」から帰ってきたばかりです。競技選手、関係役員約2200名が集結しました。2005年にフィンランドで開かれる国際大会の選考を兼ねています。国際大会は昨年スイスで開かれ、2007年には静岡県で開催される予定です。
 全国大会は22歳以下の青年技能者の技能日本一を競う大会で、機械工学関係や建設技術、理容・美容、レストランサービス、和・洋裁、料理など42種目の職種があります。参加資格としては技能検定種目は2級以上、それ以外の職種は各業界からの推薦になります。日本は精密機器組み立てや旋盤、電子機器組み立てなど伝統的に強いですね。最近は台湾、韓国が大変強くなっていますが、時計修理も以前はスイスなどヨーロッパのお家芸だったのが日本が強くなりすぎて、現在は競技職種として存在していません。それは企業の力ですね。現在は主にトヨタやデンソーといった最高レベルの技術を持った会社が支えている。企業もきちんとそこに投資をしている。特に愛知県はものづくりの県なんです。
 日本の技術の優秀さを物語るこんなエピソードがあります。1997年のスイス大会で精密機器組み立ての部門、これは日本がずっと金だった種目ですが、組み立てたら動かない。選手がこれはおかしいと、逆に図面上で1000分の1の誤差を見つけて指摘したんです。結局それが正しかったということがありました。

―― 日本の技術は相当なものなんですね。残念ながら技能五輪にはネオン関係の種目はないようですね。
 はい、ネオン関係の職種が参加できないかと、廣邊前会長ともお話したこともあるのですが、国際大会の正式の競技職種として認定されるためには参加国が12カ国以上必要です。技能五輪自体はヨーロッパで始まったので、アジア圏で強い職種を認定するのはどうしても難しいですね。当然今ある競技職種も12カ国集まらないと抹消されていしまいます。
 しかし、64年の天皇崩御の時に感じたのですが、ネオンは平和を感じさせ、人の心を明るくするメッセージ性がある。すぐれた広告宣伝の媒体として技術的な研究だけでなく、人の心を豊かにする研究をすすめていけばいいのではないでしょうか。

―― 今日はお忙しいところありがとうございました。

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