二四番地、とラングドンは自分に言い聞かせながら、無意識のうちに教会の尖塔を探していることに気づいた。ばかばかしい。忘れ去られたテンプル騎士団の教会が近くにあるとでもいうのか。
「ここだわ」ソフィーは叫び、指さした。
ラングドンはその指の先を追って前方の建物を見た。
これはなんだ?
現代的な建物だった。背の低い要塞を思わせ、前面の最上部に巨大な正十字形のネオンが輝いている。十字の下にこんな文字があった。
チューリッヒ保管銀行
教会を探していたことをソフィーに話さなくてよかった、とラングドンは思った。象徴学者の職業病で、なんでもない状況にも隠れた意味を見いだそうとしてしまう。いまは、この平和な正十字が永世中立国スイスにふさわしい象徴として採用されていることをすっかり忘れていた。
少なくとも、謎は解けた。
自分たちが持っているのは、スイスの銀行の貸金庫をあける鍵だ。
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