業界活動のはじめはオイルショック後のネオンサインの点灯解除交渉でありました。石油問題も解決され、電力の省エネ化が定着、ネオンは夜間に点灯されるものであり、全電力使用量の0.02%であることも、通産省は充分に解っていながら、ネオンの点灯解除の通達を出すことを渋っていたのです。
従って、一般の営業用のネオンサインは点灯されたものの、大企業の広告用のネオン塔はなかなか点灯することが出来ないまま、銀座あたりも夜間は不点灯の広告塔が多く寂しい夜景が続くままでした。高村会長が連日のようにエネ庁に通い、陳情を続けたかいがあって点灯再開が正式に認められ、明るいネオンの輝く夜景を再び見ることが出来たのであります。その間の苦労は業界にとって忘れることの出来ない事柄であります。
特に在京理事の心労と多方面への陳情努力は大変なものであったと思います。このことが後日トラウマとなり、昭和天皇の崩御と大葬の儀の時に、再びネオンの消灯問題がエネ庁から打診があった時に、高村会長は協会としては決して受けるべきではない、あくまでも広告主の自主的な判断にまかせるべきものであるとの考えに固執されました。しかし、最終的には自ら、全会員にネオンサインの消灯を呼びかけ、崩御からの一週間と大葬の儀の三日間、消灯並び点灯を二回行い、全国のネオンサインの消灯を短時間に、見事に実施することにより、ネオンの消えた暗い夜景をもって、国民の哀悼の意を表すことが出来たのであります。
私は、高村会長のもとで総ての事柄について、一心同体の気持ちで業界活動をさせて頂き多くの勉強をすることが出来ました。
まず東京都が、昭和六十一年に屋外広告物条例の改正にあたり、広告物の総量規制を導入することに対して、我々業界は、屋外広告物の表示面積の総量を規制するなど決して受け入れることが出来ず、断固反対することとなりました。この時、東京でこの総量規制を認めることは、全国自治体に波及することになることは目に見えていたからであります。しかし屋外広告業界の実状を見ると、違反広告物が氾濫し都市の景観に重大な影響をおよぼしていることが実態であり、業界としてもこれらになんらかの対策をたて、対応をせざるをえない状況でありました。
それまでの条例によりますと建物の屋上や壁面に設置可能な広告面積は、建物壁面面積の約100%であることは解っていましたが、実際には、建物に100%の広告物を表示しているものはなく、街の中心部でも多くのものは屋上の広告塔と袖看板、その他壁面看板を合計しても建物総壁面面積の40%ぐらいのものでありました。これらの実状を業界関係者に認めさせ、条例的には100%掲出可能であるものを、20%減少させた80%案を業界の合意面積として交渉することにいたしました。都側も、実態調査により、実際の広告物の掲出面積は合計で35%〜40%であるとの結果をつかんでいました。従って、業界の80%と行政の40%との攻め合いとなりましたが、中をとって60%とすることにより、業界は実質的な掲出面積の削減になるものではないことを確認の上、改正条文の中に広告表示面積の「総量規制」の四文字を入れることを受け入れ、実質的には60%まで表示可能であることを選んだのであります。つまり、行政の目的である広告物表示面積の「総量規制」という文言を受け入れ、表示面積60%の実を業界がとって決着することにしたのであります。
このことと同じように、長年にわたってネオン協会の先輩達が通産省に陳情していたのがネオン工事に係わる従事者の国家資格の取得でありました。ネオン業界は国家資格として電気工事士をもっていますが、ネオン工事の特殊性からしてネオン工事を施工する技術者に電気工事士とは別の、国家資格として「ネオン工事士」を認めて頂きたいとのお願いをしてまいりました。
幸いにして、電気工事関係二法の改正にともなって、待望の「ネオン工事士」は「ネオン工事資格者」という名称で国家資格として認定許可されることになったのであります。これも我々は「士」を「資格者」という名称で妥協したのでありますが、国家資格という実を頂くことを選んだのであります。
当然のこととして、資格を頂くためには協会自ら「ネオン工事資格者認定講習会」を開催し、会員に受講させなければなりませんが、全国的に認定講習会を実施することは並大抵のことではありません。多くの協会有志が集まり、まず「認定講習テキスト」の作成、「講習会」の実施、「講習会の講師」の人選等極めて短期間のうちに、これら課題を全て消化し事故なく無事にやりとげたことは、業界にとって大きな自信と誇りであります。あらためて「認定講習会」に御協力を頂いた関係者に厚くお礼を申し上げますとともに、ネオン協会員の底力をたたえたいと思います。
私は高村会長のもとで在京の渉外担当理事として貴重な経験をさせて頂きました。高村さんはいかなる時も微力な私の意見をもとめ、よく聞いて頂き、丁重なご指導を頂いたことに今も感謝しているところであります。
(続く)
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