味自慢・酒自慢 今、話題の「愛知万博」名古屋にて |
東北支部 酒太郎 |
ぶらりと暖簾をくぐった料理屋でまたまた旨い酒に出逢った。銘柄は「醸し人九平次」…。耳に残るネーミングと斬新な色使いのレッテル。味わいにもインパクトがある。出所を探ると…生まれは名古屋!今が旬な都市にこんな酒があったのか。 親方が語る酒の背景を知るとまた興味深く、味わいが五臓六腑にしみ渡るようだ…。 今年で6年目の造りを終えた十五代目・久野九平治さんは御年40歳。地元の高校を出、東京の大学に進学するも…熱中するのは“芝居”でありました。バイトと稽古と自主興行のチケット売りに明け暮れる毎日。食いモノ屋で働き、胃袋を満たす…そんなある日、転機が訪れました。片手間にこなしていた“モデル”の仕事のご縁で、本場パリに渡るチャンスが訪れたのです。親から貰った立派な身体を武器に、持ち前のバイタリティーで数々のオーディション会場へ足を運ぶも NGの山。しかし、自分自身を表現する術・審査員や観客を魅了するパワーを身を持って感じ取った彼は、帰国すると“造り酒屋”に舞い戻り、その経験を如何なく発揮する事になるのです。時は平成9年の事でした。 「酒望子」という銘柄で長年に渡って地元の方々から愛飲されてきた酒造りに入るも、今一つ自分を表現出来ていないと感じる彼。当時はエンジニアであった、幼馴染み佐藤影洋(現杜氏)を口説き落とし、二人三脚で今までとは全く違った“自分の酒”を作り出す一歩を踏み出すのです。新たな酒を造る為に抱えた借金を返済するのは、昔取った杵柄で始めたイタリアンレストランでした。自ら調理場に立ちパスタやピザを作ったのです。レストランで得た儲けを酒の借金に充て、何とか二足の草鞋を履く数年間。光が見えてきましたのはそれから数年後の事。出来上がったお酒を手にアポなしで飛び込んだ東京の有名地酒屋さんで評価を得ました。全ての酒を買い取ってくれたご主人がおススメの酒として、飲食店や雑誌などに PR。あれよあれよという間に人気銘柄へとステップアップしていったのでした。 昨年からまた九平治さんが雑誌を賑わせております。ここ数年、仕込みを終えると単身フランスに渡り三ツ星レストランのドアをノックしておりました。白ワインに引けを取らない芳醇でしっかりした味わいの酒を造り、必ずや世界中の飲み手から支持を受けるというとてつもないデカイ夢の一歩を最も厄介なフレンチの世界から攻めていったのでした。彼のパワーと情熱が高いハードルを越えさせ、今は有名な三ツ星レストランのメニューにまで登場するようになりました。その噂は海を越え、わが日本でも話題となり全国のフレンチレストランでも、“九平治”の姿を見ることが出来るそうです。 『貴賓・優しさ・懐かしさを感じていただけるお酒を造りたい』と語る久野九平治さんにますます注目です。 ・・・・親方の熱弁に思わず痛飲、すっかり酩酊状態な私に『どうぞ』と蜆の味噌汁をさっと差し出す親方、良い店との出会いに微笑みながら千鳥足でホテルにたどり着いた小生なのだ。 |