これだけ旅行ブームといわれながらブータンについての一般的な認識は薄い。私自身、行ってみてびっくりすることが多過ぎた。
先ず、インドとヒマラヤ山脈に囲まれた山岳の秘境でありながら、文化レベルが高く、国中に清潔感が満ち、民情が温和なのだ。それはインドやネパールとはかけはなれた、まったく異質のものだ。決して豊かとは言えないが、ブータン人の一人一人が感じる幸せ度は国民の過半数が生活不安や悩みを抱く日本より上なのではなかろうか。人々の平穏そのものの表情がそのことを教えている。
ダルシンとよばれる細長い旗もいかにもこの国らしい。
寺社はもとより、峠や山すそのいたるところにこの旗が見られる。それも、一本や二本ではなく、林のように林立して風にそよいでいる。旗の布地には細かな文字で経文が刷り込まれている。ダルシンは道行く旅人の安寧を祈り、人々の幸せを願うために建てられたもの。
この国の国王が提唱した国民総幸福度(GNH)がGNPに代わり世界共通の指標になることを願いたい。