戦後、ドイツ人が負ったホロコーストの十字架はあまりにも大きく重い。ナチスは600万人の罪のないユダヤ人を死に追いやったが、その数も方法もかつて人類史に例を見ない。
ドイツの人々はその贖罪の意識を永遠に胸に負い続けることだろう。
ブランデンブルグ門からすぐのところに最近造られたユダヤ人犠牲者記念碑もそんな意識の現われのひとつだろう。
広大な空き地に並ぶのは2711本ものコンクリート製ブロックだ。装飾も、文字も、一切の付加物のない冷たいブロック。平面のサイズは同じで、高さは大人の腰程度のものから背丈を越えるものものまで様々。
これは石棺なのか、それとも石碑なのか。そのブロックとブロックの間の狭い通路を右に左にあてどなく歩いたとき、虐殺されたユダヤ人の嘆きと悲鳴が聞こえてくるような気がした。一つ一つのブロックにそれらの人々の怨念が充満しているかのごとく、胸が締め付けられるように感じた。
犠牲者を弔い、哀悼の意思表現としてこれほど相応しい形は他にないだろう。