日本人はよほどガウディ建築に惹かれるようで、有名なサグラダファミリア教会やグェル公園は日本人観光客で溢れている。一方街の中心部・グラシア通りに面したカーサ・ミラは観光バスも止まることなく、喧騒の外にある。カーサ・ミラはガウディが唯一手がけた集合住宅である。一階が店舗になっているから日本でいう「下駄ばき住宅」だが、とてもそんな言葉で表わされるような簿っぺらなものではない。天才の生み出したこの建物は建築というより、都市のど真ん中に屹立する岩山のように泰然として神秘性に満ちている。洞窟をイメージさせられるレストランやブティックのショーウィンドーも自然を模したたくみな造形だ。それ等の店舗サインはさぞかし凝ったものになっているかと思ったら、意外に単純で素材もネオンやアクリルを用いた今様な造りとなっていた。しかし、この稀有な造形物に違和感なく、シックリとなじんで見えたのはガウディ作品の偉大さに負うところかも知札ない。中でも、レストラン「TABACOS」の突出サインは簡素ながら色、形体共建物にピッタリのデザインで感心した。 |