今年は9・11同時多発テロからちょうど10年目に当たる。世界貿易センターの跡地再生はどこまで進んでいるのか。関心を持っていたところ、昨年暮れにその現場を訪れることができた。
早朝、大通りをサラリーマンの群れが黙々と行きかうそばでフェンスに囲まれた一角だけが騒々しい。目下鉄骨の建屋が組み上がったものから基礎工事中のものまで大車輪で進行していた。目隠しのシート沿いをぐるりと半周してみた。やっと隙間から垣間見るだけで一望することはとうていかなわない。
ふと、大きなシート一枚分に拡大した現場状況を俯瞰する写真に巡り合った。深く掘りこまれた二つの矩形がツインタワーの跡地で将来記念館と博物館が建てられるとのことだったが、先月のニュースで追悼広場が完成したことを知った。
工事現場の道路沿いに救助作業に立ち働く消防士たちのレリーフがあった。そのとき亡くなった人たちの名前も刻まれ、未だ花束が供えられているのが生々しかった。