リバプールと聞けばビートルズを連想する人が大部分ではなかろうか。彼らの名声はそれだけこの古い港町を有名にした。古色を帯びた街並みと酒場を飲み歩く船員たちのざわめき。そんな光景を期待してこの街を訪れたらすっかり当てが外れた。港の周辺は再開発され、ガラス張りの美術館や奇妙なデザインのレストランが建つし、古いドックはしゃれたショッピングタウンに生まれ変わっていた。
　昔、駆け出しのころのビートルズが歌っていた酒場の雰囲気を味わいたいものと夕刻ホテルを出た。地図を頼りにそんな界隈を歩いていたら何とも意表を突く建物に出会った。
　丸くくり抜かれた外壁がグルグル回転しているのだ。それも、斜めに軸を設定しているから本来の位置に来たときだけ建物と一体になるが、あとはかしいだ壁の隙間から内部が覗き見られる。
　２層分のフロアをまるまる使って巨大な機械が据え付けられている。そのメカニックは驚くほど精巧だ。これだけ大じかけな演出をするにはかかるお金も半端ではないだろう。
　遊びもこれだけやれば本物だ。