ピアノの詩人ショパンや偉大な科学者キューリー夫人を生んだポーランドは、ドイツとロシアの狭間に位置する地理的条件故に不幸な歴史に翻弄され続けてきた。ワルシャワの市街は第二次世界大戦で完全に破壊され、その85%は、戦後瓦礫から再建された。中でも旧市街と呼ばれる一画は残っていた細密画を元に細部まで忠実に再現されたもので、石畳の広場に馬車が行き交う様は中世そのものだ。
カフェや土産物店のサインは復興後デザインされたものだろうが、古風な街並によくとけ込み、しかも現代感覚に濫れる。一つ一つが粒よりとも言いたい素晴しさに歩きつつ胸踊った。わが国のサインが金属にしろプラスチックにしろ板材で構成されているので平板に感しられるのに対して、ここでは鋳造や鍛造で造り上げたものが大部分で、量感のある豊かな造形に手づくりの温もりが伝わってくる。確かな腕とセンスを持った工匠が今なお存在し、サイン造りに情熱を注いでいる様がうかがわれるようだ。 |