自然と建築が一体となってつくり上げる風景で私はこれ以上に見事な造形を見たことがない。それはまるで太古の昔からそこにあったように厳然と存在する。
大天使ミカエルがこの海に浮かぶ岩山に教会を建てるように告げ、建設は8世紀にはじまった。その後幾度となく建て替えられ、ほぼ現在の姿になったのは16世紀になってからのことである。尖塔の上に立つ金色のミカエルは曇天の雲の中に半ば隠されていたが、バッハのオルガン曲トッカータとフーガが天空から降ってくるような感激を覚えた。
そう広いとは思えない頂には大伽藍がそびえ、回廊をめぐらした中庭まであった。岩山の麓には土産物屋やホテルが建ち並び、門前町の趣だった。いわば、この島全体が小さいながら濃密なミクロコスモスをかたちづくっている。
礼拝堂の前庭から望む海は薄い潮がさざ波を立て干潟がどこまでも広がる。薄紫がかったその風景は幻想的でこの上もなく美しい。
もっか島に行く橋を建設中で、それができれば風景の印象はまた違うものになるかもしれない。