World Sign バックナンバー 世界のサイン、遂に出版される
VOL.142  林檎の礼拝堂
林檎の礼拝堂
 ノルマンディの片田舎の荒れ果てた礼拝堂との巡り合いはアーティスト田窪恭治に触発を与えた。彼は地元自治体を説得し協力を取り付け、一方日本で資金造りの支援活動を展開した。4年間の準備期間を経たうえで、家族ぐるみで現地に移り住み再生にとりかかった。完成したのはそれからさらに7年後の1999年だった。
  一人の芸術家が人生を捧げた仕事は「林檎の礼拝堂」と呼ばれる作品に結晶した。小さな礼拝堂の内部は真っ白に塗装され、描かれたたわわな林檎と葉っぱで埋め尽くされていた。色ガラスの屋根からは多様な光の束が差し込み、室内を輝かせていた。
  礼拝堂は現在、所在するサン・ヴィゴール・ド・ミューの村が所有権を持ち、訪れる人たちに感銘を与えている。
  彼のなした無償の行為が日本の文化人を触発させ、異国の地に花を咲かせた。真の文化とは、芸術活動とはそんなところにあることを教えてくれていた。
 





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