World Sign バックナンバー 世界のサイン、遂に出版される
VOL.145  ニューグレンジの先進性
ニューグレンジの先進性
 アイルランドのダブリンから程近い丘陵地に巨大な古墳群がある。その代表がニューグレンジと呼ばれるもので、5千年以上前に造られている。ピラミッドよりも古い、その墓の造形に心を奪われた。
  お椀を伏せたような緩やかな屋根は石積の上に土を盛ったもので、全体が芝生に覆われている。やや傾斜して積まれた周囲の石のブロックは白色で、モザイク状に黒い石がはめ込まれている。その黒石は入り口では疎で、徐々に多くなり、最後部は黒一色になる。全体の外観は後楽園の東京ドームに似ていないこともないが、正面から見たたたずまいが、亡き白井晟一が設計した精神性を感じさせる一連の建築にきわめて似ているのだ。
  全体のバランス、白から黒に移り変わる外壁のデザイン感覚、豊かな造形は古代の巨石文化時代の建造物とはとても思えないのだ。あたかも現代の優れた建築家が古代にタイムスリップして造り上げたような錯覚さえ感じてしまった。
  その上、墓の通路を入った最奥部には一年に一度だけ、冬至の日のみ光が届くように設計されている。彼らは優れた天文学的知識も身に付けていたのだ。
 





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