地球上に名物鉄道は数あれど、最もロマンを秘めているのはシベリア鉄道ではあるまいか。最果ての白樺の大地を突っ走り、世界で最も長い距離を誇るのだ。何しろ東の起点、ウラジオストックから西の終点モスクワまで9300キロ。日本列島の端から端まで一往復半、通して乗ればまる6日間もかかる。両駅間の時間差は何と6時間もあるのだ。
もっとも、私たちが乗ったのはウラジオストックからイルクーツクまでの4100キロだから、全長の半分弱だ。ウラジオストックを夜出発し、翌朝ハバロフスクに到着。そこで一泊し、翌日の夜再乗車。以後二泊三日の旅の後イルクーツクに到着となった。都合三泊の鉄道旅ではあったが、この列車の醍醐味は十分味わうことができた。あまり時間の長さを感じなかったのはしごく快適な旅だったからだろう。
ウラジオストックでは駅舎の立派さに目を見張った。ホームには鉄道発足時の機関車が展示してあり、中国人観光客が大勢取りかこみ記念写真を撮っていた。ウラジオストックは中国と国境を接しているのだ。モスクワからの距離を刻み込んだ立派な里程標(右下写真)も目についた。