World Sign バックナンバー 世界のサイン、遂に出版される
VOL.150  托鉢
托鉢
 ラオスの古都ルアンパバーンで托鉢を見学した。
朝、まだ日が出ない真っ暗な中。街の大通りは静かなざわめきの中にあった。地元の人たちに交じってツアー客も歩道に座を占めて待機していた。中には青い目も。車の屋台が観光客のためにもち米のご飯を籠に詰めて売っていた。台には菓子類も並ぶ。
 夜明けと同時に一列に並んだお坊さんの一団が現れた。薄暗い中、オレンジ色の袈裟が鮮やかだ。通りの向かい側には見物の観光客が立つ。信者がお坊さんを拝み、差し出された容器にしゃもじですくったご飯を入れる。次々と新しい一団が現れる。
 この光景に胸が震えた。ぬぐっても、ぬぐっても涙がにじみ出た。この感動は一体どうしたことだろう。
 御仏に帰依するお坊さん。僧たちに托鉢と言う形で無言の礼を捧げる信者たち。一体となった行の形が尊く美しい。信仰の真の姿を垣間見たように思った。
 食事で残った分は貧しい人たちに分け与えられる。お菓子はその人たちのためだった。
 この国の男性は一生のうち一度は仏門に入る。時期も期間も当人の裁量に任されている。この国の人々の信仰心は本物だ。
 





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