伝統韓屋宿とは韓国の伝統的な民家を今に伝える宿ということ。そんな宿に泊まれるとあって是非ともと参加した。
同行者は単独参加の女性二人と高齢のご夫婦だけ。たった五人とは少ないと思ったが、何と宿の客間が4室しかないのだ。
「楽古斎」と呼ばれる宿は築130年で当時の貴族階級が住んだ北村という街の一角にある。高貴な人の別荘といった趣ながら、格子の襖で仕切られた部屋は簡素で、オンドルの床を畳に置き換えれば日本間に通じるものが感じられる。能舞台のようなベランダがしつらえられていて妙齢の女性が琴を演奏して聞かせてくれた。そこで二泊したが、私の目的はもう一つ。
その前日に宿泊した河回村にあった。王朝時代の村落形態をそっくり残し、世界遺産にもなっている。この村の居心地の良さについては建築家・中村好文が著書「意中の建築」に詳しく書いていて、一度は訪れてみたいものとかねがね思っていたのだ。藁ぶき屋根のたたずまいはそれこそ日本の農家そっくりで、めぐらしたトウエンマルと呼ばれる縁側も昔懐かしいものが感じられ、貴重な体験だった。