現代の建築家を代表する巨匠、ル・コルビュジエは「住宅は住むための機械である」と言った。しかし、彼がマルセイユに設計した集合住宅、ユニテ・ダビタシオンはその言葉とは裏腹に機能的であると同時に人間的でもあった。光にあふれ、人々の生活感に満ちていた。そして、何よりも美しい。
建築後、もう半世紀を経過すると言うのに、以後何らの改修を加えることもなく、377戸の家族が生活を営んでいる。屋上には庭園のほかプール、体育館、野外劇場がある。しかも、低層階にはホテル、郵便局、スーパーマーケット、オフィスと都市機能のほとんどが備わっているのだ。
1階の管理室外壁には彼が考案した建築の尺度であるモデュロールがレリーフで晴れやかに示されていた。
新築時より住みこんでいる、もう80に近いご夫婦が部屋の隅々まで案内してくれた。調度品や部屋の装飾に長い歴史が刻まれていた。きれいに整頓され、そう広くはないが、うまく住みこなしている様がうかがえた。
今年、コルビュジエの一連の作品群が世界遺産に決定したとき、上野の国立西洋美術館とともにこのマンションも加えられたことは当然と思った。