青空と白い雲がシルバーの球体に映り込むと、まるでマグリットのシュルレアリスムの絵のようなこのモニュメント、どこかのメディアで目にしたことがある人も多いだろう。
これは「アトミウム」と呼ばれるモニュメントで、ブリュッセルの中心部から地下鉄で30分程走ったエゼル公園にある。アトミウムは鉄の結晶構造を1650億倍に拡大したもので、高さが102mあり、1958年のブリュッセル万国博覧会のために建てられた。原子力の平和利用を願ってベルギーのエンジニア、アンドレ・ワーテルケイン氏によって設計されている。1951年に米国で初めて原子力エネルギーを使った発電が行われ、1954年にはソビエト連邦で世界初の原子力発電所が運転を開始する。1958年に開催されたブリュッセル万国博覧会はまさに原子力の時代であり、アトミウムはその時代を象徴したモニュメントだったのである。
アトミウムの球体の中は当時の万博に関する展示室になっているが、施設内部はサイエンスフィクションさながらのライティングやインスタレーションで、エンターテイメント性が強く、誰もが楽しめる施設になっていた。地上から92m上の最上階にある展望台まで、天井が透明なエレベーターで22秒かけて一気に上がることができるのも面白い。記憶に残りやすいアイコニックな建造物は、都市のイメージを創る重要な役割を果たすが、アトミウムはまさにその好例と言えるだろう。
2025年に開催が決定した大阪国際博覧会。1970年から、またとないチャンスが再び巡ってきた大阪。日本はこの都市から、世界に何を発信し何を残せるのか、オリンピックに続く世界的イベントの開催が今からとても楽しみになった。