VOL.18 ブダペスト東駅の時計ネオン

 東欧圏での最初の訪問地はハンガリーのブダペストであっでた。われわれ一行はウィーンから鉄道の旅で、第一歩を印すブダペスト東駅を目ざした。車窓に流れる広大な小麦畑を眺めながら、ウィーンの華やかさに余韻を残しつつ、旧社会主義国のネオンサイン事情は如何にと思いやった。到着した駅構内でわれわれを迎えたのは正面を飾る大時計であった。その文字盤を縁取るネオンの輝きを目にしたときは何かほっとした。ネオンがあれば、ネオンサインは当然あるだろう。推察の通りで、東欧各国の街のネオンサイン普及度は他のヨーロッパ諸国と何ら変るところはなかった。
 そればかりか、都市の美しさ、建築物の流麗さは西欧以上のものが感じられた。考えてみれば、ハンガリーとチェコスロバキアはともに今世紀初頭までオーストリー・ハンガリー帝国としてハプスブルク家のもとに栄え、華麗な文化の花を咲かせてきた。不本意にもソ連の蹂躙と共産政権によって経済が停滞したのは、第二次大戦後のことに過ぎない。案内の若いガイド君の顔は、暗い政治から抜け出た開放の喜びに溢れていた。これらの国々がかつての活力をとりもどし、一日も早く繁栄をとりもどすことを願わずにはおられなかった。
 





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