アートフロントギャラリーの北川フラム氏は2000年に第1回越後妻有大地の芸術祭を企画実行・プロデュースしている。芸術祭の目的は、過疎、高齢化の進む日本有数の豪雪地・越後妻有を舞台に、アートを媒体にして地域をつなぎ活性化させることである。この芸術祭は効率よくアートを見てもらうことではなく、地域の情報発信としてアートを媒介させ旅をしてもらうことだと言っている。広い対象地域であることが旅をつくり、訪れた人々がアートを通して考え、地域を知るきっかけをつくるということである。イベントを通しての情報発信媒体はアートなのである。
このバス停は奥能登国際芸術祭に制作された。作者のアレクサンドル・コンスタンチノーフは風景に溶け込み忘れ去られているような4ヵ所のバス停について、「珠洲」の地名から真珠を想像し、真珠が貝殻の中にあるようにバス停を構造体で覆うことを考えた。水平垂直を基本構造としつつ、計4か所のバス停それぞれに、立地に応じた異なるテーマを設け、素材であるアルミニウムの造形は周囲の風景と呼応しながら、場所の持つ特性によって異なるバス停を登場させている。このバス停における情報は、バス停としての共通イメージと、地域特性をテーマに表現したアートによって美しく、地域のイメージを伝え景観向上に貢献していることである。