World Sign バックナンバー 世界のサイン、遂に出版される
VOL.190  公共のプロダクトデザインと進化し続ける都市風景
公共のプロダクトデザインと進化し続ける都市風景
 ヨーロッパの大都市でここ数年で一気に増えているのが、電動車両(EV)のための充電スタンド・ステーションだ。昨秋に訪れたパリでは、Belib,というパブリックEV充電スタンドを至る所で見かけた。パリ市内にはおよそ2200程度のスタンドがあり、利用者が一定数いる印象だ。アンヌ・イルダゴ市長は2014年就任以降、環境政策を積極的に推進しているが、シェアサイクルに始まり自転車道路の普及やこのEV充電スタンド・ステーションなど、目に見える形でグリーンシティ化が進んでいる。充電スタンドは写真の様に歩道にきちんとした佇まいで並んでおり、その洗練されたプロダクトデザインは、瀟洒なアパルトマンが並ぶ趣がある風景ともうまく調和している。
 パリの歴史を感じさせる街並みとモダンな公共プロダクトの対比といえば、バスシェルターも挙げられる。ジェー・シー・ドゥコー社によって2013年からリニューアルされた、広告付きバスシェルターのプロダクトは柔らかい自由曲線を使用した形状で近未来的な印象だ。建築家エクトール・ギマールによって設計された、アール・ヌーヴォー様式の地下鉄駅入口をご存知の方も多いだろう。バスシェルターはその有機的なフォルムが意識されたパリのスピリットが感じられるデザインになっている。
 歴史的建造物も多いパリ市内。残すべきものは強い規制によって残すが、時代の変化にも対応しながら発展し続ける都市風景は、まさにその絶妙なバランスで人々を魅了し続けている。
田嶋佳子





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