ヨーロッパの街は昼と夜の二つの異った顔を持つ。サインも少なく地味な造りの店々は夕刻早々に閉じられ、夜のとばりとともに華やかに変貌する。その演出のにない手は店の間口一ぱいの開放的なショーウィンドーであり、ショーウィンドーを引きたてる照明サインの煌びやかさである。衣裳や宝飾品がシャレたディスプレーで魅力を発散させていたり、奥行き深い店の隅々まで煌々として照し出されていたりして、ガラス一枚を隔でるだけの無防備さにビックリさせられる。あたかも宝石箱を並べたような夜のショッビング街をながめ歩くこともヨーロッパ旅行の楽しみの一つといえよう。店全体がサインともいえるこのウィンド演出に対する関心の高さは店主が夜こそ商品PRの時間帯です、と心得ているからこそだろうが、私にはそれ以上に街を散策する人に対するサービス精神の表れのように思われる。ヨーロッパ人が都市の外部空間を”通り”としてとらえ、町並の全体的な統一美を尊重する考え方がここにも読み取れるようだ。 |