VOL.23 オスロのネオンサイン

 北欧の夏の夜はいつまでも空が明るい。そのためつい時間のたつのを忘れがちだが、その時間を朝のためにとっておきたい。日中でも人通りの少ないオスロの街々を早朝散歩する気分は、また格別である。空も空気もすきとおり、人の気配が感じられない。商店のウインドのネオンだけが、生きもののように透明な光を発する。
 北欧の国々ではどういうわけか、ネオンは24時間切られることはない。澄み切った空をバックに点滅を繰り返す屋上ネオンも幻想的で美しい。突然、学生時代に観たスタンリー・クレイマー監督の「渚にて」の一シーンが脳裏に浮がぶ。ちょっとした偶然が切っかけとなって核戦争が勃発、北半球上の人類は死に絶える。わずかに原子力潜水艦に生き残った乗組員の一人が見たものは、人影の皆無な金門橋であり、サンフランシスコのビルの屋上で風のいたずらが思い出したように打つ無線機のキーである。オスロの朝はそんなSFチックな体験を味わわせてくれる。
 





1998 Copyright (c) Japan Sign Association