上海の魅力を一口で表現するなら「ミスマッチの面白さ」とでも言えようか。近代と現代、西洋と東洋が混然と同居するだけではない。壮麗な古典式建築の窓々から突き出た洗濯物の唐突さ。高層ビルの間をリキ車が行きかう奇妙さ。人、人、人と街中が人間で溢れながら、なんらの異常事態も発生せずに日々が刻まれていく不思議さ。上海はまさにワンダーランドそのものなのだ。
そんな上海の人々がしばしば足を向ける別天地がある。「大世界」と、その名も大時代めくが、いうなればミニレジャーランド。ゲームセンター、映画館、ディスコにカラオケボックスと雑居し、若者達で賑わう。140万の人間がひしめいて生きる上海の細やかな息抜きの場なのだろう。階段状の突塔が上海人の遊び心を呼ぶようにそびえ、夜は周囲を取り囲むネオン文字の光に染められる。それはあたかもワンダーランド上海のシンボルでもあるかのようだ。埋めつくす文字は、全て媒体サインであり、昨今の上海のサイン状況を象徴しているようだ。 |