「こんなところが中国にもあったのか」。夜遅く青島に着き、翌朝ホテルの窓から街並と海岸線を遠望したときの第一印象がこれだった。ドイツ風の建物、紺碧の海、そしてカラッと澄んだ空気。そこは人の波と喧騒にあふれた北京とは大違いの別天地であった。
青島は青島ビールの名で日本にもよく知られるが、観光客が訪れることはまだ少ない。街のスケールは意外に大きく、アカシアの並木にレンガ色の瓦の連なりと教会の突塔がよく似あい、ロマンチックな雰囲気がただよう。
広告までヨーロッパ風と言おうか、工事現場の仮囲いを兼ねた大きなペインティンボードが目を引く。それがまた、不思議と風景によく馴染み猥雑さが感じられない。避暑地だけあって別荘の広告が多いのは当然だが、中にはゴルフ練習場の広告板もあるではないか。社会主義とゴルフ場の組合せはちょっと不似合いながら、これも中国の解放度を物語るものか。
ここ青島にはもう一つの顔がある。それは産業振興地としての顔である。気候風土から地理的条件まで優れた立地を備えた当地が、いま、市を挙げて取り組む工場誘致の熱意は並々ならぬものがある。ペインティングボードが多いのは、そのための都市開発事業があちこちで進められているからである。この地にネオン工場をという期待は、青島市が発展に賭ける夢の発露なのだろう。当地にはいま、日本企業が続々とつめかけている。 |