VOL.29 タイ国の守護神は「からす天狗」

 この国にはじめて訪問した早々、走る車窓からこの奇妙なレリーフ像を目にしたときは、白壁の建物外観から伝統芸能の博物館ででもあろうかと思った。真っ赤な裸体像は印象的でなんとなく魅かれるものがあった。

 その後、行く先々で同様のものを見かけるにおよび、その凛として異彩を放つ像の虜になった。人体に鳥のような嘴と翼をつけた姿はどこかで見かけたように思ったが、ふと日本のからす天狗とそっくりであることに気がついた。

 この像が古くから伝承される民話か神話の主であろうことは容易に推察されたが、ガルーダと呼ばれ、ヒンズー教の神様であることを知ったのは後からである。

 「広辞苑」によれば蛇を常食とする伝説上の巨鳥で、迦楼羅と音写し仏経にも採り入れられているそうだ。

 バンコックのメインストリードであるシーロム通りに面して建つバンコック銀行の本店では、ひときわ大きな「からす天狗」が周りを睥睨していた。タイ国はこの神様をいたく尊崇しているようでタイの国立の建物には全てこの像が付けられているようなのだ。いわばタイの守護神的存在といってよいだろう。

 そういえばインドネシアのガルーダ航空のシンボルマークもこの像である。

 





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