ヨーロッパで広告塔といえば、こ存じの通り、街角に立つ例の円筒形をしたポスターボードのことをさす。「広告筒」と書くほうがよりふさわしいかもしれない。屋外広告イコール、ポスターサインという認識が強いヨーロッパでは広告塔は文字通り屋外広告のシンボル的存在であり、街の表情に欠かせない。数年前、ウィーンで開催された世界広告会議では、ウィーン市の広告塔がイベントのイメージシンボルとして用いられ大会の盛り上げに一役買っていた。メイン会場である王宮の玄関両脇に飾られていた広告塔があまりによく出来ていたので、実物を持ってきて据えたものかと思った。その後街に出て本物にお目にかかったところ、こちらのほうが数段造りが上でスケールも大きかった。頭部の凝った装飾はかつてのオーストリア帝国の栄華を偲ばせるものがある。
ヨーロッパ人の都市美にかける熱意と永年の伝統が、街中にところかまわずポスターが氾濫することを防ぐ装置としてこのような施設を考え出したのだろう。広告塔のデザインは国によって、その国ならではの特色を出しているが、ウィーンのものはやはりウィーンらしい華やかさが感じられた。 |