アルプス山脈の麓フユツセンからたどるロマンチック街道の旅では、道沿いに見る民家の窓々に色とりどりの花が飾られ、どこまでも続く緑の起伏と共に夢見るように美しい。この街道のハイライトが「中世の宝石」と讃えられる城塞都市ローテンブルクである。
おとぎ話の国に迷い込んだような通りの店々には街並にピッタリと溶け込んだ、見事な突き出しサインが並ぶ。ここではサインが街並に欠くことの出来ない構成要素であることを実感した。ふと、このサインのモチーフは「花」ではないかと気づいた。繊細な造りの突き出しアームはからまる蔓枝の形態そのままであり、突端に釣り下げたサインは一輪の花のイメージである。
花そのものを店のシンボルとしたサインも多い中、私が気に入ったのは写真の二点。一つは本物のバラがサインと一体になる趣向で、その作為は心憎い。そしてもう一つは、わずかに高さ40センチ足らずの花形のサインながら、よくよく見ればねじりん棒のシンボルマークが付いており、これがパン屋のサインであることに気づかせられる。この街道の人々の生活は花と共にあり、花に寄せる想いの深さに感じ入った。 |