パリに行ったときは地下鉄に乗るのを楽しみにしている。ホームで素晴しいポスターボードにお目にかかれるからだ。地下鉄のホームというのはたいていの場合殺風景で無機的、かつ陰気というのが通り相場だが、パリだけは違う。
壁から天井まで一体につながった円筒断面の空間で、壁いっぱいに貼られた大きなポスターが異空間を造り出している。画面の巨大な人物や風景画が眼前に迫り、不思議な感覚を味わう。鮮やかな色彩が構内を明るく彩る。センスのいいポスターを一つ一つ目で追っていると電車の来る間を退屈させない。
このポスターボードを是非写真に収めたいとパリに行くたびにカメラを向けたが、露光不足でいつも失敗していた。最近はISO400などの高感度フィルムが一般的になったのでその恩恵に預かり、今回やっと満足のいく写真を撮ることが出来た。
ついでながら、パリの地下鉄は乗り換えるのが結構難しい。通路が縦横無尽に走っていて、行く先表示に従って歩いていくと何時の間にか元の場所に戻ってしまったりする。あたかもメビウスの輪に舞い込んだような気分でまさに4次元世界の感覚なのだ。円筒状のホーム空間はそのメビウスの輪の断面といった趣。
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