ウィスコンシン州マディソン市の郊外。閉店間際の小さな
ショッピングセンターに人影はなかった。ひときわ目立つ全面ガラスのファサードを
ネオンで美しく飾った、いかにも高級店といった感じの店が一軒。
中を覗けばそこは宝飾店。壁の一画にエロチックなネオンオブジェが目に入った。
これは何としてもカメラに納めたいもの。
店内に入ったものの客の姿はなく、いかめしい紳士顔の店主と若い店員の
二人だけ。いきなりパチリとやるのも不しつけだし、モノがモノだけに
面とことわるのも気が引ける。だいいちネオンの前に店員が立っていて動こうとしない。
ひとまずは、とショーケースに目をやりながら店内を一巡りしたところで
「何か捜しものでも」と(言ったような)店主の言葉。こうなればこちらも
仕事がやりやすい。「ノー、ノー、ザツト、ネオン、フォト、OK?』片言を
ならべれば「オー、ブリーズ」と好意あふれる声が明るい笑顔に乗せられて返ってきた。
石膏の後ろ姿の女体が妙に艶かしいと思ったが、出来上がった
写真を見たら、どうも本物の人間から型を取ったらしいのだ。
肩の窪みやおしりの微妙なシワにそれらしさが読み取られる。
果たして真贋はいかに。
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