海外旅行が浸透したとは
いっても、流石にロシアやバル
トの国のツアーはまだ一般的
ではないようで、同行者は
皆旅慣れた人ばかり。意外
に感じたのは、若い男性の参
加が多かったことだ。それも
2度3度と回を重ねて来て
いる者が多い。ロシアのどこ
に魅かれるのかと尋ねたと
ころ、ロックミュージックが素
晴らしいと言う。青年の一
人は「今回のツアー参加は日
本では手に一人らないCDを
買って帰るのが目的」と言う
から驚いた。この不景気風
の吹きつのる最中、まだまだ
懐に余裕のある若者もいる
ようだ。
それはそうと、確かにこの
国のロック熱は相当のものら
しく、モスクワに到着したそ
の日、クレムリン宮殿に面す
るマーネージ広場ではロック
コンサートの真っ最中。小雨
の降りそぼる中、若者の大
群集が通行を遮断していた。
街ではミュージックショップの
大きな店舗が、ここでは珍し
い点滅ネオンを掲げていた。
写真中央のCD盤をデザイ
ンしたのがそれ。
モスクワを発つその日、ロ
シアの金融破綻とルーブルの
切り下げが報じられた。
「この国はこの先どうなる
のでしょうか」と、現地ガイ
ド嬢の顔は冴えない。若者
のロック熱は、出口の見えな
い経済状況に立たされた若
者たちの憤まんの捌け口な
のだろうか。比較し、不況と
はいっても、日本は遥かに恵
まれているようだ。