バルト海に面した小国、エストニア、ラトビア、リトアニアの三国は1991年のソ連邦崩壊に従い相次いで共和国として独立したもので、それまでソ連ばかりかドイツやデンマークなどの近隣諸国からも侵略され続けてきた忍従の歴史を持つ。
ロシア国境から一歩踏み込んだだけで。吸い込む空気が違うような気がした。それは明らかに開放的なヨーロッパと共通するもので、街中に溢れる色彩や宿泊ホテルのインテリアにも軽やかさとセンスのよさが感じられた。そして何よりも人々の表情の違いが印象的であった。政治の違いがかくも人間の表情を左右するものかと不思議に思われた。
これらの国々のサインは素晴らしいものが多かった。とりわけ印象的だったのが、壁面いっぱいに描かれたペインティングサイン。町の広場や道路に面した住居の妻壁は、日本であれば窓やベランダとしてめいっぱい採光、通風に供されることになるが、当地ではめくら壁が多く、もっぱら広告スペースとして活用されている。広告というよりは環境アートといった趣で、図柄が明るく文字部分の少ないものが多い。
写真は中世の面影を残し、しっとりと落ち着きを見せるリトアニア第二の都市カウナスにて。