天安門事件のあったのは1989年。あれからもう十年を数えるが、当時の中国の商店街は北京市内でさえバラックと見紛うほど汚く、みすぼらしかった。街中を行く人々の顔が毎日洗っていないのではないかと思うぐらいにうす黒かった。この国の人たちは身奇麗にすることを知らないのではないかと本気で思ったものだ。しかし昨今の変わりようはどうだろう。もっとも日本でも終戦直後のことを思えば同じことだが。
中でも一番変わったのは美容院だろう。
着いたばかりの南京の繁華街を夜10時過ぎに散策していたら、ほとんどの店が閉まっている中ポツン、ポツンと営業している店がある。それが飲食店以外はどういうわけか美容院ばかりなのだ。その内の一店を覗いてみた。
店頭のサインは赤、青、白のねじりん棒で日本の理髪店といった趣ながら、全面ガラス張りでなかなかシャレた感じ。客もまだ大勢いて店内は活気にあふれていた。ガラス壁の営業時間を見てビックリ、9時からなんと23時までとなっている。考えてみれば中国は夫婦共稼ぎの国。女性がおしゃれにお金をかけるほどの余裕は出てきたものの、その時間帯が夜にしわ寄せされたと言うのが実情では。