成都と昆明は成昆鉄道でつながる。椎名誠の「中国の鳥人」は、この成昆鉄道の途中駅での思わず身震いしてしまう悪夢的トイレのエピソードを導入部として、昆明から煌玉捜しの旅で峻厳なる山峡に分け入る。その幻想的桃源世界の物語の印象から、昆明というところもよほど時代に取り残された辺境の地かと思っていたが、まったく予想が外れた。
空港広場で、翌年この地で開催されるという「世界園芸博覧会」の大きな歓迎ポスターがまず目に入り意外な感じした。
街には高層ビルが立ち並び大都会といった趣である。
その高層ビルに、いかにも中国的なサインが取り付いているのが面白かった。金箔仕上げのなまこ文字を縦に並べた風景は、中洋折衷とでもいおうか。
なまこ文字は日本でも以前は屋外看板のごく一般的な文字形態として盛んに使われたが、最近はとんと見られなくなった。サイン制作のハイテク化が手の込んだ造りを追放し、立体文字の表面が平滑になり、ついにはシート一枚の貼り文字となってしまった。最近の金融業界の合併競争とそれに伴うサインの表示替えは、このサイン加工のハイテクかあってこそ対応可能だった。社会の要請と技術はまさに一体のものであることを痛感する。でも、こんななまこ文字も懐かしい。