台湾には檳榔樹という椰子の木に似た植物が蘇生している。その実はガムに似た嗜好品として台湾人に愛用されている。噛んでいると体が熱くなり、一種の覚醒作用を伴うようだ。実の中に入れた石灰と唾液が化学変化をおこし、唾も口も真っ赤に染まる。
その檳榔を売る店が、街中にも車の沿道にもやたらと目につく。
サインが変わっていて、蛍光灯にカラーのセロハンようのシートを縞状に巻き、扇型に配したものを軒に掲げている。さらに、店のコーナーを色付き蛍光灯で縁取りしたものもある。店の構えはお世辞にも立派とはいえないが、全面を素通しのガラスで覆ったものが多い。
檳榔屋だけがどうしてこんなにハデハデなのかと不思議に思ったが、その理由はどうも販売競争の激しさにあるらしい。店によっては集客力のアップをねらい、若い女性がセクシーな服装で店番に立つことも多いとのこと。日本で言えば「タバコ屋の看板娘」というところか。もっとも店ではタバコも扱っている。
この檳榔はくせになり、トラックの運転手など、一日に5千円以上注ぎ込む人もいるとのこと。一度体験してみたいものと思ったが、初めての人間には決して口に合う者ではないと言われてやめた。それに、口が真っ赤になってはかなわない。