World Sign バックナンバー 世界のサイン、遂に出版される
VOL.69  ウィロウ・ティー・ルームの突き出しサイン
ウィロウ・ティー・ルームの突き出しサイン

 アールヌーボー期を代表するインテリアデザイナーであり建築家でもあったチャールズ・レニー・マッキントッシュはスコットランドの工業都市グラスゴーにいくつかの主要作品を残している。その一つであるウィロウ・ティー・ルームの外観写真を見たとき、両脇の突き出しサインに目が行った。ディテールは不明ながら惹かれるものが感じられる。今度の旅では、そのサインを是非写真に収めて来たいものと思っていた。

 しかし、グラスゴー滞在の日程がいかにも短い。夕刻5時過ぎに到着して翌朝8時には次の目的地に向かう。しかも宿泊ホテルは街の郊外であった。着いた日は雨模様だったから、翌早朝にチャンスを持ち越し、朝の6時半にタクシーを呼んでもらう。外はどんよりとした霧雨模様でまだ暗いがアタック精神が頭をもたげる。

 若い運転手に行く先を告げれば返事はよかったものの、何度も地図を広げ無線で本社に問い合わせたりでなかなか到着しない。指し示したガイドブックのページにはちゃんと住所も書いてあるのにどうしたことか。「ここです」と言われて降りた所が記憶の建物とは似ても似つかなかったりでジリジリさせられることこの上ない。とある大きな交差点を横断したとき、横の通りにまさしくあの建物がチラリと目に入った。 やっと巡り合えたサインはマッキントッシュの作風そのもので、透明感とロマンに満ちていた。内部のインテリアと家具はさらに素晴らしく期待にこたえてくれるはずだったが、その時の私にはサインだけで満足するしかなかった。

 





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