カンボジアの内戦でポル・ポトが政権をとったのは1975年4月から1979年1月までの3年8カ月であった。その間無謀な社会主義革命が強行され、170万人の人たちが虐殺された。はじめは前政権の要人や知識人とその家族が犠牲となり、最後には同胞たちと虐殺にかかわった末端の人間まで秘密保持の理由で殺した。この国の伝統を伝える古典舞踊の踊り子たちでさえ例外ではなかった。
プノンペンのツールスレン刑務所を見学した。うつろな目、恨めしそうな目、憎悪に燃えた目、たくさんの目がこちらを見ていた。おびただしい顔、顔、顔。パネルにびっしりと貼り込んだ写真は、ある部屋では未来を夢見る精悍な青年たちであり、ある部屋ではまだあどけなさの残る少女たちであった。彼らはこの部屋で尋問され、拷問を受け、別の場所で殺された。彼らの表情は見るものに何かを訴えかけ、その顔写真を見ることさえ背筋に戦慄の走る思いであった。
人間はなぜこんなむごいことができるのか。なぜこんな残酷な行為が必要なのか。アウシュビッツでも、ルワンダでも同じ行為が繰り返された。そしてイラクでも。悲しく、おぞましい人類の現実がここにある。