World Sign バックナンバー 世界のサイン、遂に出版される
VOL.85  アプサラの舞
アプサラの舞

 カンボジアの旅では遺跡群のどこにも置いてあったこのゴミ箱が気に入った。グリーンで塗装した板張りの質素なものだが白く刷り込まれたロゴマークが印象的だ。菅笠をかぶった女性が踊っているようなデザインなのだ。添えられた「APSARA」とはどういう意味なのか。現地ガイドに聞いてみたところ、アプサラはこの国の文化遺産保護団体の名称で、クメールの神話に出てくる天女から取ったと言う。とすればマークは踊る天女をデザイン化したものだろう。この国の遺跡には天女の舞い姿をレリーフで表したものが実に多い。
 アンコールワットの回廊に展開される壁面レリーフの中に「乳海攪拌」といい、神様による国造りの図柄があった。わが国の古事記に出てくる国造りの物語とよく似ているが、海をかき回すヴィシュヌ神の頭上でたくさんの天女が舞っていた。
 その回廊のレリーフで面白いのはいくつも出てくる戦闘場面である。大勢の兵士たちの戦う様があたかも踊っているようにリズミカルで、そればかりか見方によれば女性のようになよなよしているのだ。クメールの人々は本来戦いを好まない温和な性格だったのではなかろうか。

 





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