山形・河北町発祥!全国を魅了する「冷たい肉そば」の魔力

魔法のスープ

 山形県の中央部、西村山地方に位置する河北町。この町で生まれた「冷たい肉そば」は、いまや山形を代表するご当地グルメとして全国にその名を広げています。もともとは地元で愛されてきた庶民の味でしたが、テレビ番組「秘密のケンミンSHOW」で紹介されたことをきっかけに一気に話題となり、いまでは県外からもこの味を求めて多くの人が訪れるほどの人気料理となりました。

 「冷たい肉そば」の最大の魅力は、その名の通り“冷たい”スープにあります。使用するのは、柔らかな若鶏ではなく、しっかりとした歯ごたえと濃厚な旨みをもつ親鳥。骨ごとじっくり煮出すことで、力強いコクと深みをもつ出汁が生まれます。そのスープを冷たく仕上げても脂が固まらず、むしろすっきりとした後味を楽しめるのが大きな特徴。冷たいのに滋味深く、最後まで飲み干したくなる不思議な魅力が詰まっています。「まさしく魔法のスープ」。

田舎そば、肉の旨み、イカのゲソ天

 麺には山形ならではの田舎そばが使われます。太めで噛みごたえがあり、コシの強いそばは、濃厚な親鳥出汁に負けることなく存在感を放ちます。そこにのせられる親鳥の肉は噛めば噛むほど旨みがあふれ、食べる人に「またこの味を」と思わせる力があります。薬味のネギが爽やかさを加え、全体の調和を引き立てています。

 さらに、冷たい肉そば文化を語る上で欠かせないのが「イカのゲソ天」です。肉そばと一緒にゲソ天を注文するのが地元流。サクッと揚がった衣の香ばしさと、噛むほどに味が出るゲソの食感が、そばのすっきりした旨みと絶妙にマッチします。スープにくぐらせて食べれば、揚げたての香ばしさと親鳥出汁の旨みが一体となり、また違った美味しさを楽しめるのです。地元の人にとっては「肉そばとゲソ天は切っても切れない名コンビ」といえるでしょう。暑い夏の日に汗をかきながら食べるのはもちろん、寒い冬でも「なぜか冷たい肉そばが食べたくなる」と言う人が少なくありません。

長い年月の知恵と工夫

 いまでは観光客が「本場の味を」と多くのそば店を食べ歩き、それぞれの店ごとに異なる出汁や麺の違いを楽しむ姿も見られます。お土産用や全国発送の商品も増え、自宅でも河北の味を楽しめるようになり、まさに河北発祥の冷たい肉そばは全国区の名物へと。

 冷たい肉そばは、ただ冷たいそばではありません。親鳥を大切に使い、出汁の旨みを余すことなく引き出す知恵と工夫、そしてゲソ天との組み合わせまで含めて、長い年月をかけて地域に根付いた文化そのものなのです。素朴でありながら奥深く、一度食べれば誰もが虜になる河北町の冷たい肉そば。これからもその魅力は、山形から全国へ、そしてこの旨さを味わったら、あなたの心と体を満足させるのは間違いないでしょう!

東北支部 ㈲尚文堂 角田浩二郎

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