中国支部 (株)日本彫刻工芸 大世渡英和
瀬戸内海中部に浮かぶ蒲刈島(かまがりじま)をご存知でしょうか?広島県呉市に属するその島は昔から果樹栽培が盛んで、私はそこで趣味で農業をしています。レモンなど柑橘類を中心に、1500坪を超える敷地で無農薬栽培をしています。
私の実家は農家ではありません。きっかけは妻です。妻と出会ったのは高校生のとき。妻のお父さんの実家が蒲刈で、農業をしていました。学生時代、彼女から「みかんを収穫するから来ない?」と言われ、収穫をしに行ったのが蒲刈島の農業との最初の出会いです。以来、結婚をしてからもときどき手伝いに行っていました。
時が経ち、妻のお父さんが70歳を超え「そろそろ辞めようと思うんじゃ」と言うようになりました。それを聞いた私たちは「畑を山にかえしてしまうのは寂しいよね」と、なんとか残す方法はないかと考え、その畑を私と義理の兄が中心となって引き継ぐことになりました。それが今から6~7年前のことです。
添加物が苦手だった私たちは、どうせやるならと無農薬栽培をスタート。最初は規模も小さく、植えたレモンの苗木50本の大半が猪にやられてしまうなど、その厳しさを痛感しつつ、成木として借りた20本のレモンからは収穫もでき、1年目から出荷もしました。ちなみに、私たちは農協を通さず『食べチョク』という産地直送お取り寄せ通販のサイトで販売しています。
しばらくして、周りのご高齢の農家さんたちから「うちも辞めるから引き継いでくれないか」「タダでいいから借りてくれないか」とお声が掛かるようになり、規模がどんどん拡大。
そんな中、せっかくならお客さんの顔が見えるところでも販売がしたいと思い、広島市内のフリーマーケットに出店。何回か出店していたところ、広島県内で広くフリーマーケットを主催している方とご縁があり、出店地域が広がりました。
出店を継続していると名前も少しずつ売れ、SNSで注文が入るようにもなりました。また、とあるフリーマーケットの場に無印良品のバイヤーの方が来られ「今度、広島に世界最大規模の無印を出店するので商品を卸してくれませんか」と声が掛かり、本当に広島の無印に置かれるまでになりました。
まさかの展開ですが、農業はあくまで趣味です。自然の中での農作業は無心になることができ、本当にいい気分転換になっています。
将来、この蒲刈島で妻とペンションをやり、現地で採れた野菜や果物を使った料理を振る舞うことが私の夢です。