当協会ホームページのトップ画像をご提供いただいている写真家の中村治氏による写真展が東京と大阪で開催されます。また中村氏は2021年にネオンをテーマとした写真集NEON NEONを上梓しましたが、ネオンをめぐる旅の記録として2025年1月5日に新たにNEON TOURを上梓されます。
参考:
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【中村治氏】写真集「NEON TOUR」を2025年1月6日から発売。写真展を1月7日から東京・銀座、3月4日から大阪・中ノ島でそれぞれ開催
NEON TOUR 中村治写真展(プレスリリース)
平素より大変お世話になっております。
この度、キヤノンギャラリー銀座/大阪にて、写真展『NEON TOUR』を開催致します。
2020年~24年の5年間、私は東京周辺を中心に那覇から札幌まで、各地の消えゆくネオンと、新たに灯り始めたネオンを撮影して来ました。
今回の写真展開催に際して、謹んでご案内申し上げます。
以下、展示作品の一部をキャプションと共にご紹介させて下さい。
(展示では地名のみのキャプションとなります)
展示作品の一部
東京、原宿
『#FR2 梅』
提灯と昭和レトロを取り入れた外観のファッションブランド。訪日外国人観光客にも人気が高い。レトロブームからか、ネオンと提灯を併用する店舗が飲食店を中心に増えている。
大阪、京橋
『京橋 グランシャトー』
多くの看板がLEDへと置き換わった。グランシャトーのサインは今だに健在。
横浜、千若町
『Bar Star Dust 』『BAR POLESTAR』ドラマ『あぶない刑事』のロケ地として知られ、往年のファンが集まる。昔は怖くて近寄れなかったと話す人も多かった。
愛知、知多
『DINER K’s Pit』
愛知はクルマ文化が浸透しているためか、郊外にダイナーが多い。外観、内装の内部までこだわる店に若者が車で集まる。他地域では、米軍基地のある、沖縄、福生にダイナーが多い。
京都、河原町
『パチンコ キング 河原町店』
全国にある多くのパチンコ店も、ネオンからLEDに置き換えられている。現存するネオンのあるパチンコ店で、私が最も派手な店と思うこの店舗は、京都の目抜き通りに位置する。店内2階の天井もネオン。
沖縄、恩納村
『シーサイドドライブイン』
1967年創業、沖縄初のドライブインレストラン。未だ沖縄ではネオンの人気が高く、ネオン密度は日本一かも。年配の料理店の店主曰く、返還前のゴザのネオンはすごかった、その影響が未だに人の記憶のなかにあると。
熊本、八代
『キャバレー 白馬』
日本最後のキャバレーと言われる。創業62年。当時から光るネオンは修復しながら、今も街を照らす。八代亜紀が初めて人前で歌った店で、村上春樹も訪れ記事を書いた。
埼玉、大宮
『酒蔵力 大宮西口店』
浦和、大宮を中心に展開する老舗居酒屋チェーン。ネオンは約40年前から設置していて、街のシンボルとなっている。震災直後には、街が寂しくなるのでネオンを付けて欲しいと、逆に近隣住民から要請されたそうだ。
写真展概要
2020~24年の5年間、私は東京を中心に、沖縄、札幌、大阪、京都、愛知、福岡、熊本、佐賀、静岡、山梨、群馬、栃木、埼玉、千葉、神奈川と各地に残るネオンを撮影して周りました。
職人が一本一本ガラス管を曲げ作り上げるネオンサインは、20年ほど前から、より効率的に設置でき、省電力にもなるLEDに置き換えられ、震災後の電力不足から政府がLED導入を推進したこともあり、あっという間に日本中の街からネオンが消えていきました。
2019年の年末に、日本中の夜の街からネオンが消滅しつつある、という話を聞いた私は、その翌年から東京周辺でネオンの撮影を開始しました。その直後、コロナ禍に突入したこともあり、すでに少なくなりつつあったネオンを掲げるお店が、更に相次いで閉店へと追い込まれていくのを目撃しました。
その後、潰れたお店を居抜きで借り受ける若い店主たちの店で、新しいネオンが灯り始めました。消えつつあるネオンから、新しいネオンへ、という意味合いも込め、前作は『NEON NEON』と名付けました。
前回はネオンを説明する意図もあり、アップを多用した、ネオンそのものが中心の写真群でした。今回はネオンが街をどう灯し続けてきたのか、という点を意識し、より俯瞰した立ち位置から撮影を続けました。この写真展の『NEON TOUR』というタイトルには、各地のネオンを探す旅でもあり、ネオンが照らした様々な時代を巡る旅でもある、という意味合いを込めました。
ネオンは設置条件が良ければ30年以上灯り続けるものもあります。街を歩くと、この数日で取り付けられたネオンから、30年以上も前から街を照らし続けてきたネオンまで、いちどきに出会うことができます。そして、ネオンが設置されたお店や屋上広告には、そのネオンが取り付けられた時代や人々の感覚が盛り込まれているのを見ることができます。
ネオンの灯りを頼りに街を歩くと、ここ30数年の街の来歴を感じ取れ、我々が通り過ぎてきた時代に思いを寄せることが出来ます。夜の街に灯るネオンには、ナショナルブランドの巨大広告もあれば、飲食店やバー、スナックはもちろんのこと、パチンコ店、ゲームセンター、洋服店、理髪店、スーパー、ドラッグストアから、風俗店まで様々な業態があります。
この30年、我々はどのような夜の街を求め、それはどのような時代の要請だったのか。そして、コロナ禍も遠い過去となりつつある今、これからの夜の街にどんな姿を求めていくのか。各地の夜を灯し続けるネオンのある風景を通して、写真展に来て頂く方々が、そんなことを考えるきっかけになればと思っております。
中村治
展示枚数、スライドショーについて
写真展では東京28点、大阪30点の写真を展示し、壁面に大きく映し出すスライドショーでは、200点を超える写真をご紹介します。
與那覇潤さんとのギャラリートーク
「ネオンが照らした街と時代について」
1月10日19時~20時
キヤノンギャラリー銀座写真展会場
評論家、元歴史学者の與那覇潤(よなはじゅん)さんとギャラリートークを予定しています。2025年1月6日には同名写真集も発売します。
この30数年の、夜の街の来歴に想いをはせて写真を撮影してきたため、近現代史をご専門とする與那覇潤さんに寄稿をお願いしました。そのご縁で、写真展のトークにもご登壇頂けることになりました。
略歴
1971年、広島生まれ。成蹊大学文学部文化学科卒。
中国北京での語学留学の際、英国の通信社の現地通信員として写真を撮ることから、写真家としてのキャリアをスタートする。
ポートレートを学ぶため写真家、坂田栄一郎に4年間師事。
2019年、福建省の山間部に点在する客家の村とそこに生きる人々を撮影した写真集『HOME-Portraits of the Hakka』を上梓。
同作にて、第20回さがみはら写真新人奨励賞を受賞。
2021年、東京周辺に残るネオンのある風景を集めた写真集『NEON NEON』を上梓。
2025年1月6日、写真集『NEON TOUR』(LITTLE MAN BOOKS)を上梓。
中村治
Webサイトsamphoto.jp
Instagram @samphoto36