ネオンへの興味が広がる嬉しい反響

2021年12月に発行されたNEON NEONが、その後大反響を呼び重版となりました。日サ協会員有志のご厚意によって、全会員へ1冊ずつこの本が贈られており、手に取ったネオス読者も多いはずです。

本誌前号では写真家の中村治さんの寄稿を掲載しましたが、引き続き今号では発行人の大和田洋平さんのメッセージを掲載することができました。また読者の方々からの感想も併せてご紹介しますので、ネオンの良さを今一度味わってみてください。

「NEON NEON」発行人より

LITTLE MAN BOOKS 大和田洋平

まるごと1冊ネオンの本

皆さん、はじめまして。LITTLE MAN BOOKSという屋号で個人出版を行っている、大和田と申します。私は2021年の12月、「NEON NEON」という書籍を刊行いたしました。

この本は、写真家の中村治さんによる東京周辺のネオンの写真と、私がネオンに関する仕事をしている人たちに行ったインタビュー記事をまとめた、608ページという大部の書籍です。一般の読者向けに、まるごと1冊「ネオンの本」としてまとめられたのは、日本ではこの本がはじめてではないでしょうか。「NEON NEON」は、東京周辺のネオンの「今」を記録とした1冊として、またネオンにまつわる人々の記憶を喚起させる1冊として、制作されました。

この本が出たあと、知人に「以前からネオンに興味があったの?」と聞かれました。ですが、そもそもはアオイネオンの荻野さんから「ネオンの本を作りませんか?」と持ちかけられたことがはじまりで、もともとネオンに特別な関心を持っていたわけではありませんでした。荻野さんの話を聞いてはじめて、私は「そういえば、ネオンっておもしろそうだな」と思ったのです。そしていざ本が出て人の手に渡ると、本を手にした人からも、「そういえば、ネオンっておもしろいよね」と言われたのです。普段気にもとめてこなかったネオンだけれど、言われてみればおもしろい。ネオンとは、そのような存在だったのです。

そう、ネオンとは「ふだんは意識の外にあるもの」だけれど、「あらためてネオンに思いを馳せてみると、それはとてもおもしろく感じられるもの」だと思います。それは、看板としていわば「道具」に徹しているはずのネオンという存在が、その実、非常に興味深い特徴をそのうちに有しているということなのだと思います。そして、そのような興味深いネオンという存在が、今まさに日本の街から消えていこうとしている。中村治さんと一緒に街のネオンを撮影して歩きながら、またネオンに関する取材を進めながら、私はその思いをよりいっそう強くしました。

中村治さんがネオンを撮影して歩いたのは、2020年から2021年にかけての、約2年間です。お気づきの方もいるかと思いますが、この2年の中にはコロナの期間がすっぽりと収まります。途中、非常事態宣言のさなかでは、どの店も休業し、撮影にも出られない日々が続きました。こうした中、点灯しているネオンを見つけては喜んで写真を撮り、消えてしまったネオンを見つけては悔しい思いをする、といったことが続きました。そして、古いネオンや新しいネオン、大きなネオンや小さなネオン、消えているネオン、じりじりと音を立てているネオン、ビルの上のネオンや、街の片隅のネオンなど、様々なネオンを見てきました。

物質的なもの

私が驚いたのは、ネオンがひどく「物質的なもの」であるということでした。ガラス管に封入されたガスが電流によって光を放ち、色を帯びる。さらにその色が硝子の色と相まって、なんともいえない雰囲気を醸し出す。ガラスの中のガスの偏りやゆらめきが、どくどくとした血液の流れのように見え、不思議に生々しい。裏側に回り込むガラス管は立体を構成し、電極に繋がれた配線がそれらをつなげていく。1つの文字、一連の単語や文章が、ネオン管という線によって描かれ、360度、全方向に輝きを放っている。ネオンとはまさに「モノ」であり、そこに「ある」ことを実感することのできる、リアルな存在に思われたのです。

ネオンを灯したお店や企業の種類も様々でした。パチンコ店、風俗店、家電量販店、アパレル、バー、パブ、レストラン、居酒屋、ホテル、百貨店などなど。夜の闇に灯されたネオンによって、彼らは自身の在り処を示しています。そしてこれらネオンのもとには、色とりどりの歓びや華やかさがある。そしてそこには、寂しさや悲しみが漏れなくついてくる。そのように感じられるのでした。ネオンは、人が生きるということの意味を、光へと変換して表現しているのではないか。そしてその光のもとに人は集まり、同じ夢や欲望を共有し、また離れていくのではないか。

それぞれのネオン

撮影と並行して行った取材で私は、ネオンにまつわる仕事をする、8名の人の心の中にあるネオンの話を聞きました。それは過去のネオン、現在のネオン、未来のネオンに関するお話です。それぞれの人が、自分の心の底に、自分だけのネオンの光を灯し、生活し、モノを作っている。それはネオンであったり、絵であったり、イベントであったり、店舗であったりします。それぞれの人が、自分だけのネオンとの関わり、ネオンの記憶を大切に育てていく。それはネオンが、人の心を惹きつけてやまない存在であるから、そして人の心に寄り添い、人の心とともにあるものだからだと思います。

「NEON NEON」の刊行後、想定以上の反響をいただき、重版も行いました。そして本を手に取った多くの方から、「こんな本がほしかった」という声をいただきました。ある書店さんからは、「こうした本は見たことがなかった」「まだ言葉にならない興味に光を当て、それを心ゆくまで掘り下げた良書」というコメントをいただきました。これまで気づくことのなかったネオンの魅力に光を当て、本として掘り下げていく。「そういえば」と振り返った際に甘美な輝きを見せてくれるネオンについて、これからもその足跡を追いかけていきたいと思います。

「NEON NEON」読者より

Y.T

自社で手掛けたネオンに感激

ページをめくるたび、ネオンの美しさと華やかさ、時にふんわりとした儚さを見事なアングルとタイミングで撮影された写真を通じて改めて感じる事のできる印象でした。色数が限られたネオン管だからこその「見せ方」「表現」に創意工夫を凝らした製作者の努力が本文を通じて共感できる1冊。

この業界に長年身をおいており、自社で手掛けたネオンサインも多数、本文にピックアップ頂いており、「ネオン屋」冥利に尽きる思いです。

Neon Tuber

ネオン史語るに貴重な一冊

ネオンだけに着目した本はこれまで目にしたことがありません。写真の量もさることながら、ネオンに携わる様々なお仕事の方のコメントも非常に興味深いものがあります。ネオンは街中の身近なところに存在しますが、その仕組みや制作の背景をほとんどの人は知りません。

この本を読み、ネオンのアップ写真を見れば、マニアックな部分にも触れることができるでしょう。ネオン史を語るにしても貴重な一冊だと思います。

奥野電工水谷

後世に残る一冊

この分厚い写真集をパラパラとめくってみると、新宿、池袋の古いネオンが目に入り、若き日の懐かしい記憶が蘇りました。

ネオンにしか表現できない温かみのある表情は写真を通してもしっかりと伝わってきました。

職人さんの熱い思い、手作りならではの苦労もわかり、その内容にすぐに引き込まれていきました。後世に残せる1冊ですね。

真栄ネオン杉山

名古屋編も欲しい

NEON NEON、さっそく見させてもらいました。ありがとうございます。日頃ネオンに携わっている人間にとって本当に素晴らしい写真集だと思います。できれば、自分が曲げたネオンの現場の写真が載ってたらもっとよかったかな(笑)。

随分昔の話ですが、自分で曲げたネオン管が、名古屋の栄交差点や、名古屋駅前の交差点で上を見上げると、あちらこちらで光っていて、知り合いにもよく自慢していたなあということを思い出しました。今では、名古屋の街のネオンもずいぶん姿を消してしまいましたが、こうしてネオンを「作品」として後世に残せる写真集を名古屋でも作ることができたらいいなと思いました。

シンヨーネオン電気國定

NEONが続くよう応援

自身ネオンに携わり40年になろうとしています。この本を見ると街中にネオンが溢れていた時代を思い出します。その当時は日本にも活気があり、いたるところにネオンが点滅していた時代です。この目で見たものや、実際携わったものも載っていてちょっとびっくりしました。これだけ資料を集めるのは大変だったであろうと感心しました。

今見ると非常にアート性にとんだ光源だったと思います。今ではなかなか採用されない光源ですが、無くなるのは惜しい光源です。最近は店舗デザイナー等に支持されて小さな工事も出てきています。

曲げの職人さんも減ってきましたが、なるべく続くよう応援したいと思っています。今回はありがとうございました。

国際電氣工業平野

NEONは不思議な光

街の景色の一部として、その強烈で個性的な光を放っていたNEONが昔はいっぱいあったんだなあという「記憶」を、この写真集が後世に残してくれていると思います。ちょっとエロチックでどちらかというと品に欠ける魅惑的な光源に、どの時代の人もその光に吸い寄せられるように集まっていったのでしょう。

NEONという特殊な光は、どこか寂し気で見る者をなぜかノスタルジックな気分にさせる不思議な光だなあとつくづく感じました。

y.n.

色んな表情を見せるネオン

目の前に現れたら度肝を抜かれるような迫力のネオン。はたまたオシャレなスタイリッシュなネオン。哀愁漂うウエットなネオンとはひと味違う可能性がNEON NEONに詰まってます。

紙質もギラギラを押さえて、装丁も裁ち落としでステキです。

migi

1粒で2度おいしい

遠くからの眺めはもちろん、間近での見た目がまた実に面白い(かっこいい)ものだな、と改めて、というかこれまで以上に感じました。遠近でここまで違うのは(幅があるのは)ネオンくらいではないでしょうか。また、制作現場を見学した人が「おぉー!」となるのも、そうなんだろうなと思います(見たい)。

たくさんのネオン管を使った大規模なネオンはLEDに置き換わっていくかもしれませんが、逆に「ネオンならでは」の味が際立ってきた感もあり、これからもどこかしらで必要とされていくであろう未来が見えます。

書名に込められたという「懐かしいネオンから、新しいネオンへ」の両方がじんわりと伝わってくる本でした。

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