近代建築の三大巨匠の一人、ル・コルビジェが設計したロンシャンの礼拝堂。世界遺産に名を連ねるル・コルビジェ建築作品の一つである。フランスの東部、ヴォージュ山脈の南に位置する山上にある教会で、特徴はなんと言ってもこの環境であろう。周りは深い森に囲まれ、小さな山上に突如として現れる、個性的な建築を見つける体験は高揚感がある。
いくら世界遺産とはいえバスもなく、最寄りの駅から30分以上徒歩で山上まで歩かなくてはいけない。車でも高速を下りた後、細い田舎道を長らく走ってやっと辿り着く。こうやって徐々に辿り着く過程は、階段を登ってお寺や神社につくような参道にも似ている。心を落ち着けて訪れる神聖な場所なのである。
機能性・合理性を重視し、緻密に計算された、多くのル・コルビジェのモダニズム建築と異なる、この有機的な建築が多様な反響を呼んだことは想像に難くない。東西南北の壁は湾曲し、屋根はそり返り、中に入っても垂直部分が少ない。その動的な外壁に加え、大きさの異なる窓、カラフルな窓ガラスから放たれる光が、軽やかな動きある内部空間を作っている。光は多方向に放たれ、まばゆく神々しい。ひんやりした空気感、蝋燭の揺れる光、独特の音響効果で内部の空間も感動的だ。
この礼拝堂建築は歴史的な分岐点として、以後、現代教会建築に大きな影響を与えている。
田嶋佳子


