公共複合施設に見る文化水準

バスク州ビルバオ

アイコニックでユニークな公共施設として忘れられないのが、ビルバオにあるアスクナ・セントロアである。ビルバオはスペイン北部、ビスケー湾にあるバスク州の最大の都市である。鉄鉱石が豊富で鉱業・製鉄業で栄えるも産業は衰退。その後、創造都市として再生に成功した都市である。

建築に興味がある人なら聖地とも言える都市であろう。フランク・ゲーリーの傑作として知られるグッゲンハイム美術館、磯崎新によるイソザキ・アテアビル、サンティアゴ・カラトラバ設計のビルバオ空港、ノーマン・フォスターによる地下鉄駅。世界のスター建築家による美しい建造物が見事に並ぶ。

アスクナ・セントロア

そんなビルバオで存在感を放つ施設が写真のアスクナ・セントロアである。1904年にワイン貯蔵庫として建てられ、1994年に図書館、スポーツセンター、映画館、多目的ホール、カフェ、レストランなどが入る文化複合公共施設として再設計され、2010年に開館した。

特徴はそのインテリアで、フランス人著名プロダクトデザイナー、フィリップ・スタルクによって設計されている。彼は江戸川沿いにある、燃える炎のオブジェがランドマークのスーパードライホールのデザインで、日本でもよく知られている。

施設の見所の一つはイタリアの舞台美術家であるロレンツォ・バラルディがデザインした43本異なる造形の柱である。時代ごとに異なる意匠の柱を軸に、無限の文化、建築、戦争、宗教の交わりを表現している。

かつての鉄鋼業の街を象徴するエントランスのダイナミックな鉄柱や、見上げると頭上にプールがあり泳いでいる人影が見えるなど、どこの風景を切り取ってもまるで映画のワンシーンを体現するような、それは美しい文化施設になっている。

色々な目的で何度でも訪れたくなる公共施設、市民の文化に対する意識の高さを感じた。

田嶋佳子

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