お台場のビックサイトの一角に突如地面から現れる大きなノコギリのオブジェを目にしたことがある人もいるのではないか。同じアーティストが制作したこのパブリックアートはイタリアのミラノ、カドルナ広場にあり、タイトルは「針、糸、結び目」(Ago, filo e nodo)である。アメリカ人ポップアートの巨匠、クレス・オルデンバーグとコーシャ・ファン・ブリュッゲン夫妻の作品だ。
シンプルで力強く、カラフルで、ほっこりさせる作品が多く、昔から大好きな作家の一人である。馴染みあるモチーフに、どうしたら意外性を持たせることができるのか、それは彼の作品の長年の重要なテーマであったと、娘のマーチャ・オルデンバーグも語っている。身近にあるものが巨大になる、その比率の不自然さがとてもユニークで非日常を感じられる。
この針と糸を用いたオブジェは、ミラノのファッション産業をテーマとしている。カドルナ駅の改修工事に伴い2000年に制作されたこの作品、糸に使われた緑・赤・黄色はミラノの地下鉄の路線色である。糸が地面を通過して結ばれた部分までは地下トンネルを表現しているのだそうだ。そして針に巻きつく糸はミラノの紋章を連想させているということで、市民に慕われる工夫が凝らされたパブリックアートとなっていた。
田嶋佳子

